大栗博司さんの「宇宙数学とは何か」紹介

 大栗博司さん(東京大学数物連携宇宙研究機構,カリフォルニア工科大学)の「宇宙数学とは何か」を紹介しておこう.本論考は数式なしの解説につき誰でも読むことができる.内容は,先端の物理学を中心にそれに必要な数学を一般向けに解説したものであるが,参考文献も適切と思われる.
 なお,HSでは今秋,「宇宙の法-黎明編」をリリースする予定とのことだ.宇宙の文明の進歩の基準は数学,と言う見方もあるので,上記解説を読んで,先端の物理・数学の状況を垣間見ておくのも悪くないだろう.7 ページほどの小論につき直ぐ読むことができるが,以下,少し抜粋しておく.

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冒頭部にある本稿の目的から.

...自然界の基本法則を発見し,それを使って宇宙についての根源的な問いに答えようとする物理学の発展は,とりわけ数学と深いかかわりをもってきた...われわれの経験領域が拡がるごとに,それを記述する新しい数学が必要となるのは自然なことである.この記事では宇宙の研究のために必要な数学のことを,宇宙の数学(Mathematics of the Universe)と呼ぶことにする.宇宙の数学の過去を振り返り,将来を展望しよう.

途中を飛ばして,「超弦理論と数学」より引用

超弦理論によって,複素数の発見と同様の変革が幾何学に起きるかもしれない.ユークリッドの原論の第 1 巻が「点は部分をもたないものである」という主張から始まるように,2300 年以上にわたって幾何学の基礎は大きさや構造をもたない “数学的点” であった.超弦理論は 1 次元に拡がった弦を基本単位にするので,幾何学に新しい
見方をもたらしている.弦によって幾何学的対象を見ると,“形” と “大きさ” という一見して異なる概念も,ミラー対称性によって入れ替わってしまう.また,“数学的点” は構造をもたないのに,弦は無数の形状をとることができるので,これを使ってさまざまな代数の表現が構成できる.このために,幾何学と代数学が思いがけない形で結びつくことになった.

最後の部分から引用しておく.

17 世紀から今日に至る近代科学の発達は世界史の奇跡である.歴史をさかのぼると,インド,アラビア,中国など,科学技術において同時代のヨーロッパを凌駕していた地域はあったものの,これらの地域ではついに科学革命は起こらなかった.近代ヨーロッパの爆発的な発展についてはさまざまな原因が指摘されているが(14),筆者は数
学的に整合な世界像への希求がひとつの要因であったと考えている.数学を使って世界を統一的に理解するという考え方は,古代ギリシアに生まれ(15),近代ヨーロッパに引き継がれ,この解説の冒頭に引用したガリレオの言葉に表現されている.天文学,天体物理学,高エネルギー物理学の飛躍的発展によって,10-19 メートル(LHC の陽子衝突実験で探索できる距離)から 1026 メートル(光で見ることのできる宇宙の果てまでの距離)までの,45 桁にまたがる世界の膨大な観測データが人類に提供されている.これらのすべてを,整合的に記述できる数学体系はまだ存在していない.21 世紀の宇宙の理解に必要な数学の開発に,IPMU が貢献できるように努力したいと思う.

 最後の内容は重要である,西洋音楽がいきなりバッハmヘンデルからは始まったのではなくそれ以前に,バロック,教会音楽があった.西洋科学もガリレイ,ニュートンで突然始まったわけではなく,その根源はギリシア時代にあった,古代ギリシャ無くして西洋科学の発達はなかったことを注意しておこう.

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